けれど、牧師様。
この地を、生を与えて下さったことに――、
わたくしのような瞽(めくら)が、今この瞬間も数多亡くなられていく方々を差し置いて、生き長らえていることに、本当に幸せを感じても良いのでしょうか。
夫すら、子供すら、わたくしより先に召されてしまったというのに。
[告げる疑問は、子細は変われど常に同じ内容。
ちりと覚える感情には気づかぬままに、ただ自我を苛む言葉を紡ぐ。
どんな答えが返ってきても、最後には深く息を吐いて、こうべを垂れるのが常。
しかし、最後の問いに返ってくる答えは違い]
……そんな。
[驚きを見せるも、誇らしげな語調に二の句は告げず。
ただ抱擁されるがままに身を任せた。コルセットできつく戒められた肢体が、牧師へと落ちる。
静かに手を取ってくちづける所作は、街にはそぐわぬ品の良いもの。
別れを告げる彼に、深々と礼をした]
(37) 2011/04/13(Wed) 14時頃