────あゝ。
[目を細めほくそ笑む。
男か女か分からぬが、その言葉が己にも相手にも他の者たちにも当てはまるのだとしたならば、酷く合点がいくのだ。
妬まぬ筈がない。
自分の家柄に、知性に、若さに、美しさに。
兄があのような病に冒されても尚、女学校でも後輩たちの羨望の眼差しは浴びてきた。
エスになりたいと志願してくる者も数多くいた。時に、そんな関係で遊びもしたが、羨望の眼差しを向ける者もいれば分不相応に妬み嫉み嫌がらせをしてくるような級友も居た。
それに負けるような女では無かったからこそ、その視線の意味がどうであれ、眼差しをその隙間へと向ける。
その扉に隙間があったとしても無かったとしても、極上の笑みを浮かべて小首を傾げてみせた。
どうせ自分を妬むような相手なら、自分に劣る相手に違い無いのだと確信して、偽りの慈愛に満ちた笑みを]*
(36) 2016/02/22(Mon) 21時頃