―5月2日朝7時頃、酒場内―
[あれから何十分、扉の前で立ち尽くしていたのだろう。手元を見やれば、皺になるまで握りしめていた紙。とりあえず中に入らなくては。そして当初の予定通り、カギを開け改めて店内に入った。しかし、動く気にはなれず、扉近くのテーブルに荷物を投げ出し、そのまま客席へ座り、縋るように背もたれに腕をかけ顔を伏せる。
自分が死ぬのは仕方がない。怖くないわけではないけれど、覚悟はできている。死んで悲しむ人もいないだろう。でも、自分が誰かをなんて、そんなのは絶対に嫌だ。自分が処刑されるのは構わない。どうにか投票を拒否することは出来ないのだろうか。
グルグルと回る思考を、ぎゅっと目をつぶり耐える。
そうしていると聞こえたドアベルの音。こんな時間に人が来るなんて。体を一瞬強張らせた後、ゆっくりと顔をあげ人影を確認しようと目を瞬かせる。]
だぁれ?
(35) 2013/07/23(Tue) 19時半頃