[十年の間に積み重ねたものは、けして辛いものではなかった。
お仕事は大変だったり、伯爵の寵愛は時に意地悪だったり無慈悲だったりもしたけれど。
泣かされる程愛でられたり、蕩かされる程甘やかされたりもした訳で──
魔の庇護に在って、幸福だと称せる日々を繰り返して。
気が付けば同じように捕虜とされていた彼らもそれぞれの身の振り方を選び、自分で望む場へと身を置いていた。
私も願いが叶わなかった時のこともそろそろ考えておかなければ、そんな事を考え始めていた矢先、迎えた今日の朝だったから]
……分かって、いらっしゃったんですか?
[>>31声も掛けず、しかも早朝突然の来訪という失礼にもかかわらず伯爵は怒る事も無く。
こちらの変貌にも動揺を見せず、そろそろと思っていたというその言葉に私の方が驚かされてしまった。
伯爵の寵愛をすぐ傍で受け続けた事と、魔王さまからの呪いを与えられていたおかげで早まったのかもしれないとは、私は知らぬことだったから。
願いが叶うとしても、もっと先だろうと思っていたのだが]
(35) nadia 2019/12/22(Sun) 21時頃