……ぅ……
[初めて口にした甘ったるさを感じる余裕はない。へたりと伏せた犬のような格好が、みじめで、みっともないことくらい知っていた。恥ずかしさが込み上げて、頬が熱くなるのがわかった。
ふわりと弾力のあるスポンジ生地を噛み締めて、埋まったイチゴを押し込んで、咀嚼する。解放されるまで一心に床へ舌を這わせたのは、そうすれば彼に受け入れられるものと思えばこそ。
──けれど不意に掛けられた言葉に、少年の動きはぴたりと止む。>>30]
……へ?
[顔を上げた口元はクリーム塗れ。
耳を疑いはしても、理解するには容易く。真意を聞くには頭が回らず、凍りついた声だけが漏れた。]
どうして……、
シメオンは、ぼくのお兄ちゃんでしょう?
[……ずっと、そう思っていたのに。
彼は大切な「家族」で、兄で。だから、少年だってちゃんと愛されているのだ、と、思っているのに。
否定を受ければ足場の崩れた不安感に襲われて。向き直り口元は汚したまま、縋るように問いかける。*]
(35) 2017/10/14(Sat) 22時半頃