―回想・5月5日14時過ぎ、総合病院の一室―
>>30
[滑るように開いた扉の合間から覗く影は二つ。一つは半ば予想していたと言っても構わないと思う…噂を聞きつければここにやってくるだろうと思っていたから。
もう一つの小さな影には驚きを隠せなかった]
チアキ、…それにマドカ?
[祖父母に聞こうとも行方の知れないままだった彼女の姿に、胸の中安堵が満ちた。気になってはいたのだ。ただ、みっともなくも自分の事だけで精一杯だったと一人言い訳をしてみる。
歩み寄るチアキの顔が青ざめて見えるのは気のせいではないだろう。きっと、沢山心配をかけた。
触れる指が冷たくて心地良いと思う程度には発熱している自分を自覚する。熱に湿った息を吐き出して目を伏せ、再び瞼を開いたその時にシーツの上へと点々と落ちる染みに気付いてチアキの顔を見詰めた]
……泣くな、泣き虫
掠った程度だから心配する必要ねぇよ
[涙への罪悪感とチアキへの慰めと、右手を伸ばして頬を包む手の上へと自分の指先を重ねた]
(34) 2013/07/29(Mon) 16時頃