【人】 手妻師 華月斎

　―華月斎の本工房―
[打ち手は今日も鎚を振る。
キィーン、キィーンという甲高い音だけがそこに響く。

打ち手は夢を見ていた気がする。
師の背中に追いつき、師の背中を超える夢。
そして生み出されたその劔は…………。]

『キィーン、ガキッ…！』
　しまった。折れちまったか…。

[むしろ、自分の腕も鈍ってしまったような。
それでもめげる事なく劔を打つのは、自身が当代随一の鍛治師である事に何一つ変わらないから。]

　師匠には届かなくても、他のやつに負けるような腕じゃないからな。とは言えこのままじゃ…。

[師匠の残した劔、さらにその先代達から受け継がれてきた劔の数々を見つめ、そして守りながら、打ち手は今日も劔を打つ。]

　ん？なんだお客さんか。御所望は？
　俺に打てる最高の剣…？そうだな……。

(33) りおん 2012/08/20(Mon) 00時頃