[カット、と。唐突に響きわたった声が、一瞬、何か分からなかった。周囲を見回す。ざわつき始めたクラスメイト達の姿で、漸く我に返って、息を吐いた。そう、今は、映画の撮影中。自分は撮影係として、役者の演技を映像に収めていたところだった――訳だけれど。とんとん、とこめかみを軽く叩く。まだ、頭がぼうっとしている気がした。撮影したデータを三星に引き渡して、敏い友人、もとい、“主人公”―他の役者と話している涼介に、目線を遣る。レンズ越しの時とは違って、ただ、ぼんやりと眺めるように。]
(33) 2015/07/10(Fri) 01時頃