[満足そうに微笑みを零す彼>>21に、こちらもまた、照れくさくなる。
偶に見せる恥ずかしそうな表情の他には、余裕があるようにしか見えなくて、ああ、君には敵わない。ずるいな。
その彼が、自分に見せる笑みは他の人が知っているものなのだろうか。いや、その答えがイエスにしろノーにしろ、知ってしまったらもう彼という存在から戻れない気がするから。言葉にはしない。]
っ…、キス…って、
[なんと言ったろうか。キスを?
それが冗談と受け流せるほどの余裕は彼にはない。
唇を、唇へ触れるその行為の名前はもちろん聞いたことしかなくて。
悩んで、悩んで、悩み通してどのくらい沈黙が続いたろう。
彼は、この沈黙に呆れてしまっただろうか。
そんな彼の手を取り、少し遠慮を交えながら、自分の顔の元へ。
そのまま彼の指先に唇を。
ほんの数秒、それな長いようで短くて。軽く触れただけの唇の感触は、手袋越しに彼に伝わっているだろうか。]
これじゃ…だめ、かな。
[消えしまうのなら、その度胸はなくて。困ったように首を傾げて彼を覗き込めば、どのような表情をするだろうか。]
(33) 2015/04/09(Thu) 18時頃