―回想/5月2日夕方 薬屋「三元道士」店内―
毎度アリヨ~ まタ来てネ♪
[定型句じみた見送りの挨拶と共に少女の背中>>332が扉に遮られるまで片手をひらひらと振り、見えなくなれば堪え切れなくなってつい肩を揺らして笑い出してしまった。
確かに、来店時に見慣れぬ店内の景色に呆ける客は三年経った今でもそれ程少なくはない。だが、来店から退店まで呆けた客人は少女が初めてだった。
気分と思い付きで変わる初見の客への前口上を述べた後に彼女の用件を聞こうとしたのだが、興奮からか何なのか、外の雨に負けぬ勢いで矢継ぎ早に発せられる言葉の数々にほんの少し気圧された事は少女は気付いただろうか?
気付いていない事を祈るばかりである。
どうにか『応急手当』『色々』『持ち歩き』『簡単』という単語を聞き取る事に成功すれば、店内に飾っていた木製の木箱(紅木に蓮の花、掛け金の止め具が付いている)に、適当に傷薬や痛み止め、解熱剤等必要そうな薬を詰める。適当な入れ物が無かった為、彼女が眺めていた物の一つだったこの木箱を選んだ。
包帯は特に商品として扱ってはいなかったが、自分が予備として持っている物を2本程入れてやる]
(33) 2013/07/23(Tue) 19時半頃