――個室――
[ムパムピスに誘われ、チャールズには気づかぬまま、個室へと赴く。寝台に横たわってすぐに、泥のような眠りに落ちた。
そしてゆっくりと、眼を覚ます。普段は隠されている、目蓋の下の蒼が開く。薄い敷布の裾を掴んだ]
……久々に、あの方がそばにいました。
[脳裏に浮かんだ、夢の中の亡夫を思い出し、ため息に似た息をこぼす。平時のような気分の沈みはなく、顔色はむしろ良い]
わたくしは、求めても、いいのですね。
[待機室で囁かれた言葉を思い出して、ゆるやかに笑う。
生に対する後ろめたさや、己に対する躊躇いは未だある。けれど告げられた言葉と眠りを挟み、どこかすっきりとした感覚を覚えていて]
……。もう少し、色んな方のお話を聞きましょう。
[呟いて、杖を持つ。
平時よりも幾分軽い所作で腰を上げると、帽子を被る。
説明された部屋の外観を思い出して歩き出し、廊下へと一歩踏み出した]
(33) 2011/04/18(Mon) 20時半頃