65 Le Manoir de la Depravation ―淪落の館―


【人】 漂白工 ピッパ

──朝──

[蜂蜜やオイル、付着した体液でべとべとだった身体を熱いシャワーで洗い流し、さっぱりとした顔で廊下を歩く。

浴室まではガウンを着て来たけれど、今は昨日と同じ透け感のある柔らかいシルクシフォンを身に着けている。
ワンピースの下の肌はしっとりと吸い付くようにやわらかく、湯上りで仄かに桜色に色づいている。]

 ───…。

[すぐに部屋に戻るつもりだったけれど、なんとなしに足は遊戯室に向かう。
誰も居ない遊戯室。
入り口に立って、中を覗き込んだ。

奏でる者のいないグランドピアノが、静かに黒い光沢を湛えて、広い部屋の片隅で眠りについている。

──昨日は、ついに丸一日ヴァイオリンに触れなかったというのに、別段焦りも後悔も感じていない自分に少し驚く。
四年以上の習慣がこうもあっけなく崩れ去るものかと、他人ごとのような奇妙に冷めた感慨を抱くばかり。]

(32) hana 2012/12/16(Sun) 23時頃

← ↓ ■ □

ツール

クリップボード

ピックアップ

>>【】