──回想:"七五三 涼介"のこと──
[これは違う、というのが第一印象だった。
朝のニュースで新作ドラマの配役の発表があって、私は思わず手を止めた。
そのドラマには原作となった小説があって、私は、それを何度も読んでいる。
孤独な少年が繰り広げる、ひとつの、悲しくも美しい殺人ゲーム。
次から次へと人を手にかける残酷さと、その犯人が、見目麗しくともまだ10代の少年でしかないというアンバランスさ。
最後に、愛する女性を殺す時に、──彼は初めて、一筋の涙を流す。
原作のファンにとって、メディアミックスというのはすごく難しいと、私は思う。
それによって作品の人気が広がるであろうこと、作者にとっても益であろうことを、単純に喜べない。
自分が作品から受け取った世界を、侵略されてしまうような恐怖感。
きちんと、いいものにしてくれなければ、許せない。]
(32) 2015/07/08(Wed) 01時頃