ー朝:自宅ー
おはよう…あれ、まだ起きてないのかな?
大学遅刻しちゃうよ、おにいちゃん。
[こんこんこん、と三回ノック。返事はない。
今日は一限がある日じゃないのかなあ。それでも物音ひとつしない部屋の様子に眉を下げて、諦めてキッチンに向かった。
前は起こしにいっていたのだけど、いつしかそのままにするようになった。疲れているのなら無理に起こしたくない。
朝に弱い兄が食卓に揃うことは最近は滅多にない。
仕方ないなあと思いつつ、わたしは二人分の材料を冷蔵庫から取り出した。
わたし達には物心ついた頃から父という存在は居らず、兄と母の三人家族だった。
わたしが高校生になる前に病気で母が亡くなってしまい、それから兄とわたしの二人暮らしが始まった。
母の遺してくれた保険料は2人が不自由なく暮らせるほどではなく、兄がバイトで補ってくれている。高校生だからまだ働かなくていいという兄の言葉に従って、わたしは家事全般を受け持っていた。]
(32) 2015/06/17(Wed) 08時半頃