― ロビー ―
[車が目的地に到着すれば、運転席に座っていたとしても居なかったとしても、降りる順番は殆ど最後だっただろう。
肩にボストンバッグを掛けて、バスを降り。老紳士の説明>>1を聞いたのなら、その手からサイリウムバンドを受け取った。
――温泉もあるのか、と。
温泉なんて、久しく入っていなかったもので、その言葉に少しだけ心を浮つかせる。
そうしてロビーへと入って行けば、何時もよりも何処か青い顔で鍵を見つめる "あの人" の姿>>22が目に入った。]
…………、……ゲイリー。
[きょろ、きょろり。
軽くあたりを見回して、今度こそ彼が誰かと話しているのではないと確認すれば、じわりと浮かぶ緊張を握りつぶして彼の方へと足を進める。
彼の背後から、そっと小さく彼の名を呼んで。
もしもそれで彼が此方を向いてくれたのなら、またひとつ緊張を強いものにしながら。]
(31) 2015/11/20(Fri) 04時頃