[9月の空の下、閑散とした通学路。
秋野自身が気づかずとも、通学路に北洋生の姿がないことは事実だった。
前方に見えた、見知った背中を除いては。>>12]
なーゆたー。
[間延びした声で彼の名前を呼ぶ。
あんまりにも生活力のない自分を何かと気遣ってくれる人は少なくはない。
正直なところその優しさで生かされていると言っても過言ではなかったのだけれど、織部那由多もまたそのひとりだった。
そういえば、電子レンジが3度目の爆発を起こしたときにも、途方に暮れて彼に電話をかけたっけ。
那由多ならば、きちんと朝食を摂ったことを褒めてくれるかもしれない、なんて。
やっぱりどこか子どもじみたことを考えながら、少し足早にも見える那由多に、小さく首を傾げる。
彼は此方の声に気づいてくれただろうか。
どちらにせよ、彼に追いつこうと自分も足を早めた**]
(31) 2015/06/17(Wed) 07時半頃