[横たわる男>>5の匂いを覚えて、衣服に牙を引っ掛けようとした頃。氷の棘を壊す銃声>>27に見えた牙は元に戻る。
ハッ、と、音のした方を伺うようにふたつの首を持ち上げた。
大きな音と共に砕け散る氷塊に、ぐるる、とひとつ喉を鳴らし、その中から近付いてくる男をじっと見つめる。
彼が近くに寄れば寄るほど上体は地面に近付いて、警戒の姿勢。
尻尾はぴんと上がって、重心移動に備え先っちょだけをフラフラと揺らす。
牙こそ剥いていないが、じり、と下がって臨戦体制だ。
(あれ、きっといたいやつだ。)
男>>27の手にある黒い塊から漂うきつい硝煙の匂いが、いつだかホレが食らった銃弾の記憶を呼び醒ます。
彼が倒れた男に寄るのを見て、尻尾をぴんとあげたまま警戒する。
ほんの少し、玩具を取り上げられたような、そんな感覚も覚えつつ。]
(30) 2014/12/17(Wed) 16時頃