[それから、隣の樫木と、或いは別の者と会話を交わしはしただろうか。
暫くは心もざわついたままだったけれど、それでも時間が経てばある程度は落ち着いてくれる――それでも、何度かちらりちらりと斜め前の席に視線を送ってはしまったけれど。
だから、途中で運転の交代を頼まれたのは>>10正直なところ、有難くもあって。
……ハンドルを握っている間は、少なくとも余計な事は考えずに済むから。
樫木がその時も隣に居たなら、軽い挨拶を交わして席を立つ。
運転席へと向かう最中、斜め前の座席の隣を進むその、瞬間。
ほんの、ほんの寸時だけ。流れた視線で、"あの人" の姿をそっと、拾い。
――ついでに隣の青年の頭頂部を、完全な八つ当たりで鋭く鋭く睨み付けてしまったのは、少しだけ反省している。
そうして運転席へと辿り着けば、席に着いてハンドルを握り。
途中で誰かに交代を申し出られればそれに甘えたかもしれないが、そうでなければこのまま目的地までバスを走らせてしまう事にしよう。]*
(30) 2015/11/20(Fri) 04時頃