― 職員室 ―
[図書室から借りてきた資料をデスクに広げて、今年も祭りの準備に不備がないかどうかひとつひとつ確認していく。もう何年もこの祭りには参加しているのに、何度やってもその段取りになれることはない。毎年毎年、いつも新しい何かに翻弄されているだけな気がする]
ジャメビュって言うんですよね。こういうの。
[ため息交じりに日本語でも英語でもない言葉を吐き出して気を紛らわせた。
母譲りの金髪は、この村ではとても目立つ。息をするだけで周囲に大騒ぎを巻き起こした母とは違って、私は騒がしいのは苦手だった。郷に入れば郷に従え。私の血の半分を占める日本人であった父が好きだった言葉だ。大人しかった父は、母との結婚生活を確かこう語っていた。台風一過。その台風は今頃仲良く天国でも吹き荒れてるに違いない。
その様子をつい想像してしまって、くすりと小さく笑うと資料の上にはらりと一本髪が落ちた。
たった一本、一目でわかる金髪
母からもらった容姿に、父に似た性格。
これが逆なら、まだ生きやすかっただろうに
目立つのも、波風たてるのも好きじゃない]
郷に入れば郷に従え。今年もちゃんとこなさないと。
(30) 2013/10/16(Wed) 22時頃