【人】 奏者 セシル

[後ろ髪を梳く指先に、
　重なるのはまどろみの中のあたたかな手。
　欲しかったのはこの手だということを、改めて思い出す
　触れて重なるだけのくちびるは、
　それだけなのに、優しく蕩けるような想いを溢れさせるから]

　……あれ、

[抱きしめられれば、腕は自然とそれに応えていて。
　銀は裡からの震えに揺れる]

　………、うん、

[溢れたものが湧き上がり、零れそうになった。目蓋が熱い。
　一筋、頬を伝っていくものが不思議で、うまく返事が出来なかった]

(29) sen-jyu 2011/06/29(Wed) 23時半頃