【人】 奏者 セシル

[これからどうするのか。
やりたいことはもう決まっている。
――離宮を出て、滾る忿怒の赴くまま更なる殺戮を振り撒く。
それがセシルの、そして呪いの仮面の望み。
だから、]


さてな。
此処から出られれば何でも良い。

面倒ならいっそこの離宮の人間全員殺してしまうかとも思ったが。
ディーノに何か考えがあると言うなら、それに乗ってもいい。
差し当たっては共にゆくさ。

[血濡れの赤に染まった彼は、王女の問いに艶やかに笑って答えた。
これまでのセシルならば決して浮かべなかった類の微笑、
あれ程丁寧に付けていた敬称や敬語が、彼の台詞から消えていることに二人は気付いただろうか。王女に対してももはや敬意は無い。

己を縛る鎖から解き放たれた彼――彼女は、今目の前に新たに開かれた世界を見た。*]

(29) wuming 2011/02/15(Tue) 23時頃