―ジリヤのおへや―
[どのくらいこうして泣いていただろう。まだ乾いていない血はショコラの服に重く染み込み、もし立ち上がれば、ぽたぽたと雫となって床を塗らすだろう。]
[ずっとこのままでは居られないと思いつつ、ジリヤを1人にする、という選択肢も浮かばなかった。]
[…にとって、『死体』という概念は、普通一般の人間の抱くそれとは大きくかけ離れていて。]
[そうでなければ思いつきもしないだろう。彼女を抱えて、朝食の場である大ホールに向かう、などという狂ったことは。]
[それでも…は、優しくジリヤの遺体を抱き上げると、血の滴る服も、泣きはらした目もそのままに、廊下に出た。
自分よりも背の高いジリヤを抱えたままで大ホールにたどり着ける程度には、いくら…だって鍛えてはある。]
[もし、この状態で人に出会ったらどうしよう、なんて、…は考えもしない。咎められるようなことなど、自分は何も、していないのだから。]
(29) 2014/11/13(Thu) 00時頃