[――嗚呼。深い翡翠色の、なんと美しいことか。
自身の目に掛かる濁った灰色がうっとおしくて、乱雑に前髪を退かせば。少し上の位置にある、彼の瞳を覗き込む。
黒の手袋に包まれた自身の手を、彼の顔へと近付けたそのとき、はた、と動きを止めたと思えば、その手は再び自身の前髪を掻き上げるにとどまったことだろう。
……どうも何かに気を取られると、それしか見えなくなってしまう。
少し距離を取って、気まずそうに彼を見上げれば、その様子はどうだっただろうか。]
……いや、本当、すまない。
ベネットの瞳が、その、綺麗で。
[言い訳じみた、けれど確かな本音を口に出せば、今度は自身が視線を下へと遣ることだろう。――折角仲良くなれそうだったのに、嫌われてしまったかもしれない。いつもそれで失敗するものだから、項垂れてしまうのも、仕方のないことだろう。]
(28) 2015/04/07(Tue) 23時頃