ー ケイトの部屋 ー
[ドアノブを手にしてから、十分な時間をかけて回す。死んだ、とは聞いていたけれど、その様子は詳しく聞いていない。部屋の中がどんな惨状であろうと声を漏らさないように、僕は自分の服の裾をしっかりと噛んだ。息苦しさのせいで涙が滲む。]
[部屋に入ると、予想外に綺麗なその状態に、まず驚いた。ベッドは人が寝ている程度の大きさに盛り上がっていて、視界の端を掠めたそれを見ないように、ざっと室内を見回す]
……荒らされた形跡はなし、と。
[部屋の空気を揺らすためだけに、僕は呟いた。]
抵抗するのも無駄なんだろうな。
……死ぬにしても、痛いのは嫌だな。
[机に目が止まった。読みかけの本にしおりが挟まっている。見覚えのあるおどろおどろしい表紙に、僕は思わず悲鳴をあげかけた。
死者の惨劇の本だ。
ロビーには、この手のおまじないの本は沢山置いてある。そのうちのひとつをたまたま読んでいたとしても不思議ではないけれど]
(27) 2013/02/07(Thu) 21時半頃