[ 静聴眼をふるわせたのは、湯煙の奥でゆらめく鬼火のほうからの呼び声。 所在を訴えかけて揺れる灯篭の列に濃淡の橙色で返事をすると、『幻日屋』の横丁におおきく尺をとる。 おでむかえのミタシュをまたぎこえ、門楼をくぐった先で纏まり終えるとくるりと瞳でふりむいた。そばには、覚えのある姿よりも背筋の伸びた、先輩の風格を纏いつつある蛍火も。 そして横丁から、湯煙のさらに奥から先客らしい気配も。] あなめでたや。煙霧の楽園 いと懐かしや。湯治の宴席 おや賑やかな。鬼火の呼声 …おや。おや。まえの冬至にはみかけなかったよ。はじめましてだよ。
(27) 2019/12/26(Thu) 23時半頃