[今度こそ、これだけは譲らない。
こういう時の僕が頑固なのは、知ってるはずだ。
いつも飄々と笑っている蒼佑が本気で戸惑っている顔を、じっと見上げて待てば。>>11
長めの沈黙のあと。
その目からまたぽろりと零れる雫に、ぎょっとした。]
……泣くな、ばか。
地獄に行くからって途中で手を離したら
ゆるさないからな。
[変なところで遠慮しそうな男に釘をさしつつ。>>13
顔を伏せれば、さっきから視界の端にちらついてしょうがなかった赤を舐めとっていく。
乾きかけの部分から少し袖をめくって、塞がりかけの傷痕まで丁寧に舌を這わせながら。
頭上から聞こえる声に混ざる吐息に。>>14
ぞくりと犬歯が疼く。
このまま肌に突き立てたくなる衝動を堪えたのは、咬むのを躊躇ったわけじゃなくて。
職人の蒼佑にとって腕は大事なものだから。]
(26) SUZU 2019/10/14(Mon) 22時頃