お母さんが、お婆様のお手伝いをしてくれてるわ。お母さんが…
『あの人は駄目よ、才能が無いわ。うちは伝統ある老舗旅館なのよ?女将も一流でなくてはいけないわ。
貴女には才能があるの。それを女優だなんてつまらない事で無駄にしないで頂戴。』
[そんなつまらない事。その言葉に、沙耶の耐え続けた苛立ちは噴き出した。]
…人の夢を馬鹿にしないでよ!お婆様は旅館が大事なのか知らないけど!人の夢をつまらないことなんて言わないで!私は旅館の女将なんて継ぎたくないわ!お婆様の敷いたレールの上なんて歩きたくない!
[辺りの人が一斉にこちらを向く。はっ、と気が付いて声を小さくした。]
…もし雨がひどくなったら、学校の近くに住んでるおばさんの所に行くから、いい。それじゃあね。
[ぶちり、と電話を切った。数分遅れでやって来た電車に乗り、学校への最寄り駅まで向かった。]
(25) 2014/04/24(Thu) 10時半頃