[古くなったブロック塀、槍を携えながら登るのには骨が折れたが。
登りきって塀上から眺める。黒い、煙を吐く車は―怪物たちに塗れて良く見えないが―白のワゴン、に見えた。
噛みしめた唇、鉄臭い味が口内に広がる。
けれど。彼は信じていた。物事は全て、ハッピーエンドになるのだと。
みんな仲良く暮らしました、めでたしめでたし それで終わる世界があるのだと。
その「みんな」の認識には、かつての人間だった怪物たちは入っていない。そのことにも気づかないで、彼はただ、信じた。今残っている人間が無事助かる結末がくるのを。]
[けれどそれはすぐに打ち砕かれる。
見つめる先の車、炎の勢いが上がる。なにか、燃料が与えられたかのように。
瞬く間に赤い炎に車体は飲まれ、周囲にいたゾンビたちも同じように燃えていく。]
セ、ンセイ……!
[ブロック塀から飛び降りる。動きの鈍い、人型のゾンビたちしかいなかったのが幸いした。車体に駆ける彼の後ろから、怪物たちはゆっくり迫ってくる。その速度につかまる気はしなかったけれど]
(24) 2011/12/05(Mon) 04時頃