―靴屋から移動中/正午―
[誂い混じりな言葉の応酬>>19ににししと、日焼けた顔面から白い歯が覗く。軽口叩いて追い抜くとは言ったものの、伸びた背の高さで眺める景色は脳ミソの裏の裏、想像の外側だ。本当にいつか彼女を見下ろす時が、自分にやってくるのだろうか。重たそうな雲を眺める目を見上げて、何と無しにトニーは思う。]
そっかァ、海もなんか
潮のニオイが濃くなってきた?
昼メシ食ったらもうドシャ降りだったりしてな!
そしたら帰りは競走だ!
[風邪知らずな風の子は大雨さえもちょっと冷たいシャワー程度にしか思っていないのだろうか。雨が降るという話をしているにも関わらず傘を持ち込む素振りもなく、意気揚々と歩き出す。そもそもこの靴屋一家、傘を差すという習慣が母と妹しか身に付いていなかった。
メシだメシだと声を体ごと弾ませ、道中誰かと擦れ違うならば同行する彼女と同様挨拶を。リッキィの講義めいた口振りにはカラカラと笑いながら、]
わかんない!
[――と、綺麗サッパリ回答するのだった。]
(22) 2017/08/08(Tue) 03時半頃