―約一月前 夕月珈琲店―
[扉に括り付けたカウベルが軽やかに音を鳴らして、男は振り返った。
清潔感あふれる白シャツに黒のベストに揃いのパンツ。
膝上までのギャルソンエプロンを身に着けたその姿は店内背景も相まって憎らしいぐらいに男、夕月優-ユウヅキ ユタカ-を彩る。
訪問客を視界に捕らえると、優は人懐っこい笑みを浮かべた。
「いらっしゃー…山ちゃん!えー営業途中か?元気げんきー?」
珈琲店に訪れた男、山田ははしゃぐ優に片手を挙げて、笑み返す。
「おーThat's right、元気元気。ゆたかも元気そうだなあ」
「当ったり前だろー。ブレンドか?」
「おー。お前のおごりな?」
「あっそんなお客様!お客様困りますぅ〜」
「わはは、バーカ!」
「うっせ、バーカ。サービスならするぜ?」
「サンキュ。しっかし相変わらず、あんま人居ねーな」
「うっせ、座れよ。マスター、ブレンドひとつー」
(22) 2015/01/16(Fri) 02時頃