―回想/5月5日夕方 「三元道士」店内―
[店に戻り着替えと化粧を直した後は、店を開けた。
感染症に対しては知らぬ存ぜぬを繰り返し、半ば追い出す様に薬の処方を断る。
胸はざわついたものの数をこなしていくうちに段々と、そのざわつきも気にならなくなってきた。――疲労は溜まるが。
自らの指定席である長椅子に座して密やかに溜息を落としている所に扉が開かれればゆるりと視線を投げた。
可愛らしい少女。何処か既視感を覚えてじっとその顔を見つめる。そんな自分の視線を意に介す事無く真っ直ぐ此方に歩み寄り、薬包を差し出されれば首を傾げながらそれを受け取る。
それは数日前にナユタへ処方したもの――否、「拾ったガキ」と言っていたか>>1:109。それを持っているという事は、目前の少女がその拾われた子供なのだろうか。
と、彼女の声を聞いたところで漸く以前来た少女と今の少女が結び付く]
マドカ、だったカナ?ナユタのトコの子で合ってル?
ンー…マドカはあとこノ薬は飲まなくテ大丈夫ヨ?
強い薬だかラ、飲みすぎモ良くないシ、ネ。
[妙に真剣なその瞳に何かを感じない訳ではなかったが、柔らかく笑ってやんわりと拒否を示して少女の顔色を窺った]
(20) 2013/07/29(Mon) 09時半頃