ーテラスー
[風に髪を戦がせながら、手摺に手を添える。何を見るでも無く、ぼんやりと虚空を扇ぐ。心に掛かった霧を払いたくて、柵へと体重を少し掛ける。
暫し、そうしていただろうか。誰か帰って来たのか、人の声の賑やかしさが近づいて来る。其の中で、聞き慣れた一際はしゃぐ声>>11。
視線をやれば一人走り出した様子の笛鳥が名を呼び、跳ねたり手を振ったり忙しないな、と思いながらも、先程の靄を忘れた様に、普段の笑顔より明るい其れにくすりと口元を綻ばせて。偶には手を振り替えしてやろうかと思うけれど。]
ーー……、
[僅かな差ながらも、口元の微笑が複雑な表情へと変わり、挙げかけた手を降ろして、其の儘室内へと引っ込んだ。咄嗟に浮かんだのは先程に続いて、らしくも無い感情。]
(……何をやってるんだ、私は)
[別に、気にする事も無い些細な感情。ただ、少し私は臆病なのだろう、人が思うよりも。其の儘、ぎり、と奥歯を噛み締め、再び部屋へと戻った。]
(20) 2014/04/10(Thu) 20時頃