[記者は軽やかに街を駆ける。気の向くまま、風が呼ぶまま。されどそとにはめぼしい出来事はなかった。平和なのは良いことだ。けれどそれではつまらない。いつの時代も、人々の心踊る出来事がなくては。
気がつけば空はもう茜色に染まっている。
終わりの朱。そして始まりの。
じきに闇に包まれてしまうだろう。
夜道でも迷わない自信はあるが、パーティに遅れてしまっては一大事だ。
その屋敷は一目見ればすぐ分かった。庭には二羽鶏がいて……おっと、それは見間違いだったようだ。
色とりどりの花々が咲き乱れており、植木もいくつか。これはこれで一つの芸術なのだろうが、生憎と教養のない記者にはさっぱりだった。
門をくぐってどれくらい歩いただろう。
ようやく屋敷の扉に辿り着いた。繊細な装飾が施された大きな扉。ブザーを鳴らせば、中から使用人が顔を出した。]
(20) 2017/01/05(Thu) 10時半頃