[再びまたここへと、足を運ぶ事になるとは、誰が考えただろうか。
扉を開いて率直に出た感想は、そんなありきたりな感想なのだが。
《人たらし》へと踏み込めば、空気は懐かしく、一瞬だけ瞳を細めては。
親よりも親と言っても過言ではない、女将の変わらぬ姿に自然と笑みをこぼせば。]
お久しぶりです、ママ。
…ええ、まぁ…なんとかやってますよ…ええ。
[《花》としてなら女将と呼んでいただろうが、ここはあえて親しみを込めてママと呼ぶ。
自分の出生からして間違えではないのだ。同じ魔へと身請けされ、魔が望んで《花》と《花》の間にできた子。
生まれながらにして《花》であり、《花》として育てられため《人たらし》以外の世界をあまり知らず。
そのため身請けされる気もさらさら無かったにも関わらず、『金の力』とやらで買われた。
息災かと言われたら、歯切れ悪く返事をしては女将の元へと後にし。]
(20) 2019/05/10(Fri) 22時頃