―5月8日 早朝 町役場前広場―
>>10
[異常な空腹と食欲。飢餓による不調。
それら全てに耐えるために、彼女は近場のベンチにて、表情を苦悶に歪ませながら、一人座り込んでいた。
片手はベンチの端を確りと掴む。出来る限り、自分に自由を与えないように。
チアキの来訪は、解っていた。
飢餓は狩猟本能を強化する。それはすなわち、嗅覚や聴覚がより鋭敏になるということでもある。軽快な自転車の音、チアキの匂い。それが自分に近づいてきているのは解っていた。お願いだから、目的地が此処ではないように、私ではないように、と願っていた。
自転車のスピードが落ちる音を聞き、願いが裏切られたのを悟った。]
……来ないで……
[来たら食べてしまうかもしれない。
……それどころか。
……彼とナユタが二人の世界を作るというのであれば、彼を襲うことでそれを阻止することも出来ると……識っている、のだ]
……来ちゃ駄目……
[消え入りそうな声で、何度も呟く。お願いだから近付かないで、と]
(19) 2013/08/02(Fri) 19時半頃