[キャベツに塩を振ったのみという、ダイエット中の女子かと問われそうな朝食を終えて家を出る。
秋野智広には、生活力というものがおよそない。
中学の頃に両親が離婚し父方へ引き取られたが、父はほぼ家にはおらず、半ば一人暮らしの環境の中、家事に挑むも惨敗だった。
電子レンジを3回壊したし、洗濯機も1回壊した。
駄目にした鍋やフライパンの数はもはや数えきれない。
中学からの友人が気にかけてくれなければ、どうなっていたか分からなかったというものだ。
ただ、今日はきちんと朝食を食べた。
もしも誰かに、食事は摂っているのかと心配げに問われたとしても「キャベツに塩をかけて食べたよ」と誇らしげに返すことが出来るだろう。
「えらかったね」と褒められたい子どものようなふわついた気持ちで、通学路を行く。
そんな気持ちでいたからか、いつもの通学路の人通りの少なさに違和感を覚えることも、ない。*]
(19) 2015/06/17(Wed) 01時半頃