[ 宿を出る前に、シスター・オーレリアや、
カリュクス・カルペディエムとは、いくつか、
ことばを交わしたと思う。主に、一晩の礼と、
本日中に、教会に寄付金を持っていくこと、とかを。
ほかにも、食堂で出会えた人がいるのなら、
いくつか声をかけに行った。
『わたし』が頭を下げると、師匠は小さな紙切れを
放ってきた。寄付金の金額が書かれた、小切手だ。
『わたし』の師匠である、
パラチーノ・インクレディングは、『わたし』が
言うのもなんだけれど、おかしな人だ。
師匠の前を辞去して、『わたし』は、
スージーさんが用意してくれた着替えを乾かすため、
屋敷の洗面所に入る。容疑者としてのうわさは、
あっという間に島中をかけめぐったらしく、
使用人たちは『わたし』と目があうと、
びくりと肩を揺らした。それは、気に留めても
しかたないことだから、小さく目礼だけする。]
(16) 2017/08/15(Tue) 14時半頃