>>15
[朧を、――正確には男を見た瞬間、ずくり、と腰に甘い痺れが走った。
掴まれた腕がびくりと跳ねる。]
っあ、 ……おぼ、ろ。
[覗き込まれた顔を見られるのも、若干の戸惑いがある。目元は潤み、息は弾んで、既に欲を抑えきれていないことは明白だと自覚していた。
それを隠すように俯くと、今度は彼の下半身から目が離せなくなる。
(食べたい。食べたいって何を。……分からない。分からないけど、はやく、欲しい。たくさん、ほしい。)
見つめるうちに口内に唾が溜まり、ごくりと硬い音を立ててそれを飲み込む。どくり、どくりと鼓動の音は増すばかりで――だめだ。おかしい。きっと、きっと薬が効いてないせいだ。]
くすり、……ッ、全然、効いてねぇじゃねえか……っ
も、っと、……、、つよいの、くれ……!
[カタカタと食事を乗せたトレイが震える。掴まれた腕を振り払うこともできずに、スタンドにしがみつくように立つのがやっとだ。
それでも顔は伏せたまま。薬を処方したのは朧だ。彼も自分の欲の高まりを知っているのはわかっている。しかしそれを幼馴染の前で剥き出しにすることは、まだまだ抵抗が強かった。*]
(16) 2016/06/07(Tue) 09時半頃