ー応接室ー
う、ふふふ……ついに……ついにこのときがやってきた!
[まるで年代物の赤ワインのような深いベルベットの絨毯の上。
七色のプリズムを散りばめたシャンデリアに照らされながら。
リッカ・ヘンダーソンは歓喜に震えていた。
赤縁眼鏡に囲われた瞳の奥、揺れるのは闘志の炎。
目を閉じた先、脳裏に浮かぶのはこれまでの苦難の日々。]
今頃ジェニファーやアランは海の上かしら?まったく、……ノッシーなんて、本当にいるわけないのにね。
[昨日まで机を並べていた同僚の顔を思い浮かべる。昨日隣のデスクで顔を合わせたジェニファーの、明日から楽しい楽しい船上生活だよばーかふざけんな編集長のファッキンハゲ野郎!という呪詛の言葉を思い出し、可哀想にと溜息を吐く。しかしその横顔はどこか浮わついていた。
自分が、“そっち側”だった頃のことが、もう既に懐かしい。
忘れずに持ってきた手紙を胸に抱きながら、リッカはそう独りごちた。]
(16) 2016/07/26(Tue) 22時半頃