いいや、綺麗な世界は好きだよ。望んでいる。
おれが元いたところに帰りたくないのは――そう、綺麗なものはたくさんあるけれど、それを誰も綺麗とは言わなくなって、ついには誰も、見なくなってしまった世界だからだ。
綺麗なものを見ないで、人のものを欲しがって、そのくせ自分のものにはごうつくな世界だったから、それは寂しいと思って、おれは帰りたくないんだよ。
どんな世界でもいけるとしたら、ねえ。
そんな夢みたいなこと、考えたこともないが。
ひとが無闇に争わないで、それでもきちんと生きていける世界があるなら、おれは綺麗なものがなくたって、その世界がいいよ。
[>>1:550生きるために兵役しか選択肢のない世の中だったから、元の国では、戦いに疲弊しているくせに、誰も戦いをやめようとしなかった。
兵士が必要なくなれば、仕事が、金がなくて餓えるばかりの人がいくらでもいたのだ。
そして自分は、そのうちの一人。]
(14) 2015/12/11(Fri) 02時半頃