…………?
[青い髪。滴り落ちる水。細くなる瞳孔。
怒りに震える声に、心底不思議そうに赤い双眸が瞬いた。
睨まれても怯むことはない。恐れる者は何も無い――が。]
――――……ああ。
[ようやく合点がいったかのように小さく呟く。
五月雨の姿が消えたことも、ヤナギの変化も、己にとってはどうでも良いことだ。故に、ヤナギの怒りの理由も理解せず、ただじっと細まった瞳孔を見つめる。
その途端、ヤナギにかけた暗示の効果が緩む。
完全に解くではなく、ただ、少しの変容を齎すだけ。
ヤナギが望むならば暗示は容易に解けようとし、彼を堕落に誘うだろう。しかし、彼が対魔忍であろうとすれば、その精神を強固に守り続ける。
ヤナギの精神の天秤は揺れを取り戻すどころか、更に大きく揺さぶられることになる。
矜持を試そうとするかのように、口元には艶めいた笑みが浮いた。]
(13) 2016/06/17(Fri) 12時半頃