~ある犬の話~[仔犬は汚い街で生まれ育った。親なし兄弟なし、でも仲間はいた。でも違う意味でひとりだった。生きていく上で仲間を切り捨てるなんてよくある話だったから。そんな仔犬を一人の女が拾い上げ、首輪をつけた。仔犬はそれに喜んだ。もう飢えない。暖かい家がある。なにより「ひとり」ではない。その時から「仔犬」は「忠犬」に変わった。絶対的忠誠を誓った。でも忠犬は陰で過去を恐れた。ある女が、仔犬時代>>186を汚らしいと言った。汚い犬は、拾い主をも汚すから。(自分が、この血液が、もっと綺麗だったなら?)(否、この血液が、御主人様と同じだったなら、きっと御主人様を汚さなくて済んだ?)あの日から、彼の「忠誠」は「狂気」に変わる。]
(13) 2016/08/02(Tue) 01時頃