何だろ。
[結局、匂いの正体はわからず、美瑠は自宅の玄関ドアを開けた。
並んでいる靴の数は少なく、女ものの靴は美瑠が脱ごうとしているスニーカーしか無かった。]
ただいま。
[家宅を知らせる声は非常に小さなもので、恐らくは居間にいる父親には聞こえなかっただろう。
そのまま台所へと入り、慣れた手付きで髪をくくりエプロンをつけると冷蔵庫を開く。
冷蔵庫の中身を確認しながらいくつか食材を出すと、手早くキャベツを刻み始めた。
父親が途中、今から此方を覗き見たがそれには全く反応をせず、黙々と手を動かす。
暫く後には、食卓にご飯と味噌汁、豚肉の生姜焼きと付け合わせが置かれたが、美瑠は席につくこと無く盆に自分の分をのせるとそのまらま二階へとあがった。
残された食事は二人分、父と兄のものだ。
都会から嫁いだ母は美瑠が幼い頃にこの土地や風習に馴染む事ができず、家を出ている。]
(13) 2013/10/17(Thu) 01時頃