[轟音にすっかりイカれた耳が潮騒を拾えるようになる頃には、
鉄屑の塊は水平線の向こうに消えていて。
お見送りを済ませた僕は、耳に嵌められた通信機を弄りながら砂浜を歩く。
無機質な個室に押し込められていた身としては、
今はまだ自分を取り巻く有機物を愉しむ事ができていた。]
でもなぁ。大人しく、ったって…
[小路でもあるかと海の反対側を気にしていたが、
生憎それっぽいものには出会えずに。
手にある得物はまさか藪を抜けるためのものじゃあないだろうかと訝しみ始めたあたりで、聞こえて来たのは…]
また、ヘリ…? それともモーター音?
[どこから聞こえるのかもわからないが、自然の音ではないそれが空から降る。
まさか僕を回収に来た訳でもあるまい、とひとつ笑って
嵌められた足輪と通信機の意味、渡されたチェーンソーの意味をほの昏い目の奥で転がす。
足は自然と、音の鳴るほうへ―――。*]
(13) 2015/03/04(Wed) 00時半頃