―5月4日朝7時、町役場前広場―
[人気のない広場で、ローズマリーはいつもの大きく胸の開いた服に、いつもの濃い化粧で視界に入るモノを少し離れて眺めていた。爽やかな朝には似つかわしくないその姿。一人で生きていくために学生の時から働き、高校生の年頃にはもう酒場に出ていた。そんな自分にとって、この姿は戦闘服だった。
感情のうかがえない顔でソレを眺め続ける。彼女を知る者が見たら、きっと目を疑うだろう。
右のポケットに、ソレは入っていた。
心底破り捨てたくてしょうがないが、同時にコレは大事な人を生き長らえさせるための武器とも理解していたので行動には移せない。
だからと言って、記入するどころかペンを握ることさえ出来ないのだが。
実際に目にすれば、覚悟出来ると思っていた。
徐々に視線は地面に向かっていく。
彼女は暫く、その場から動くことはなかった。]
(11) 2013/07/25(Thu) 01時半頃