―回想・5月5日早朝、チアキ宅前―
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[腕の中の震えと離れてゆく温もりに微かに眉根を寄せた――けれど、目前にある瞳に映る色を確かめるように、顎を引いて彼の目を見返す。こんな風にチアキを見詰めた事は、多分初めてだろうと思いながら]
…馬鹿…、なんだよ…それ、
[惑う指先の上からそっと掌を重ねて撫でた。いるだろ?友人も、同僚も…明るいお前を慕う人間だっているだろうと、思う心の中、否定する声も聞こえる。
多分、そんな事ではないのだろうと]
…………チアキ、俺…、……お前は、どうなったってお前だ、って、変わっても、変わらなくても、俺にとってチアキは、チアキだ、
[告白の言葉は意外な程にストンと、胸の中落ちた。
知っていた、様な気もする。チアキの向ける好意が友情とは異質な何かだという事、そこに付け込んできた事も。
――そしてナユタ自身の中にも少なからず独占欲がある事も。
チアキを守りたいと言った少女を想う。その時胸に芽生えたあの嫌悪感を。名前をつけるにはまだ形を持たないその感情を]
(10) 2013/07/29(Mon) 02時半頃