―回想・5月2日午前・住宅街―
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…ああ…あのときの…
[思い出した。少し身を強張らせる。あまり、思い出したくない話だ。]
安心しな。誰にも言わないよ。
あそこの主人は、本当にとんでもない奴だったからねえ。
クスリで捕まってくれて、心底ほっとしたもんさ。
[忘れてくれ、という彼に苦笑しながらそう言う。詳しいことはよく知らないが、確か罪状はそんなところだった。
警察から何でも話してほしいと言われたので、当時の主人が、時に訳のわからないことを口走っていたことや、機嫌が悪いときには暴力をふるわれたこと、欲望を満たすために、自身も何度か手を出されたことなど、すべて話したはずだ。]
…なんで、忘れてたんだろうねえ…
[主人の「愛人」の一人にしか思っていなかった彼が警察側の人間だと知った時は心底驚いた。それなりに強烈な思い出として残っていそうなものだが、彼ごと当時の記憶を無意識に消そうとしていたということだろうか。
そして、彼のことを納得すると同時に、先ほどの「女にしては」などという言葉に感じた、違和感も同時に解消された。仕事とはいえそういう役を任されるということは、つまりそういう嗜好なのだろう]
(10) 2013/07/23(Tue) 00時半頃