――昨日のことです――
[フーバーのメイドさん――ロイエがお茶菓子を勧めてくれました>>0:248から、ひとつふたつだけいただきました。
口ざみしさを誤魔化すというよりは、あたしが作ってしまった気まずい空気>>0:269の間をどうにかつなぎたくって。
名前を呼ばれたことは意外でしたけれど、あれほどのお嬢様の傍付きでしたら村人の名前を覚えているくらい訳はないのでしょうと結論づけました。
こちらとしては彼女のことは、ええと、残念ながら、いつだか一緒に遊んでいた、年嵩の似た頃合いの友人たちの中にいたかしら、というくらいしか咄嗟には出てきません。
服装がそうさせるのかもしれませんが、今の彼女はあたしなんかよりずうっと凛として、楚々として見えるものですから、あたしは記憶をたどるより、姉の姿を重ねて見てしまうのでした。
もちろん、盗みを働いて生き繋いでいた浮浪児がそこに重なることはありません。彼女が変わったこともありますが、あたしだってその頃は子供だったのです。
善悪が価値観の基準になるには、まだ少し幼すぎました。]
(10) 2018/07/25(Wed) 01時半頃