―5月9日午前5時頃・繁華街―
>>8
[薄暗い路地の中から現れたもうすっかり見慣れた耳付きのフードに、僅かな緊張を示すかのように口元を引き結んだ――が、薄明のなか現れた彼女の仕草は予想外のもの。驚きに目を瞠ってその姿を眺め、困ったような笑みを浮かべた。
確かに…ナユタの立場を考えれば自明の事だったのだろうと、思い当たりはしたのだけれど]
…みてぇだな
仕方ねぇ、とは言えねーけど…どうしようもなかったんだろ…
[そう、仕方ないのだ。衝動は抑えきれない――中枢神経を犯したウィルスの所業だ。『彼女』のせいではない。
そう割りきれてしまう自分に対して、立場を考えろと…心の中囁く声もする。
だからこそだ、という反論の声も。
所在の分かる限りクシャミを捕縛する事はいつでも出来る、けれど他の感染者は違うから。だから、彼女を捕まえるのは得策ではない。
本当は彼女に生き延びて欲しいだけだ。それも自覚した上で、絡みあう思考を振り払うかのように目を伏せ、溜息をついた]
(9) 2013/08/04(Sun) 15時頃