[そして、その時は来た。
カーテンで仕切られた医務室のベッドから、窓の外が伺える。]
――あれは。
[そこに舞うのは無数の蝶。>>1興味を惹かれた風を装って、ケイイチは窓際へと近寄った。
幻想的な光景――だからという訳ではない。その正体は勿論知っている。
同胞の生み出す蝶が本部一帯を取り囲む様に、本格的な侵攻が始まったのだと密かに胸は高鳴った。
ひらり、その中の一羽は、窓も開けていないのに迷いこんで来て――]
……うわ、っ!?
[ぷしゃ、と突然蝶が弾け、桃色の液体をまき散らした。>>2
ケイイチは咄嗟に、口元を抑えてしゃがみ込む。
謎の液体から身を守るため――ではなく、笑みに歪む表情を隠すため。おそらくここだけでなく、舞い込んできた蝶が施設中を魔毒だらけにした筈だ。
声をあげることで、その様子を伺おうと誰か顔を出すかもしれない。存分に毒を浴びた後、彼らが他の雄に出会った時が見物だ。
さて、ベッドで寝ている彼だとか、医務室にいるあの先生に、毒はどれほど作用しただろう。**]
(9) 2018/02/21(Wed) 01時頃